げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 21/6・7

6月は3冊、7月は1冊読みました。

 

黒めの方の綿谷節が炸裂する中編2本。どっちも面白いけど後味は……

1本目は女性特有?の水面下バトルが描かれており、そのエグさと間に挟まれる男の情けなさが印象的。2本目はルッキズムから生まれる人間関係が描かれており、何ともいえないリアルさが秀逸。分かってて読んだのでアレだけど、反動で底抜けに明るい話を読みたくなる。

 

言わずと知れたディストピア小説の古典。漠然とした世界観や端々のアイデア自体くらいなら誰しも一度は考えたことがありそうなものの、それを広く深く捉えてしっかり書ききっていて感服。現実世界をひっくり返したような設定なのに、随所で異様なリアリティを感じさせるところが引き込まれる理由なのかもしれません。

大学生のとき、読書を再開し始めたころに『1Q84』を人に借りて読んだのが懐かしい。オマージュがどのくらい含まれているのかを意識しながらいずれ再読したいと思います。

 

グラスホッパー、マリアビートルに続く殺し屋シリーズ3作品目。とはいっても単体で9割楽しめる内容。

端的に言ってめちゃくちゃに面白く、そして感動しました。主軸のエンタメは崩さずに、本質は愛の物語でした。感動では涙が出ない体質なのですが、それを悲しく思ったほどです。マリアビートルとともにマイベスト小説の一軍入り。

 

正欲

正欲

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朝井リョウの真骨頂、あるいは文化構想学部の最終到達点のひとつとも言うべき作品。相変わらず時代性を切り取る視点が鋭くて流石です。

ダイバーシティ、マイノリティという言葉が広く社会に浸透してきた現代ですが、その奥はかなり深いぞということを改めて突きつけてこられます。僕は元からそういった方面に関心があるので抵抗なく読めましたが、人によっては本能的な忌避感が先行したり、自分の中で咀嚼するのにかなり時間がかかる内容かもしれません。

面白いという表現が適当かは分かりませんが、面白いのは間違いないのでぜひ多くの人に読んでほしい作品です。

 

 

正欲は気になってたけど文庫化を待つか…と思っていたところ、後輩に熱心におすすめされて翌日即買いした本。何かについて人とおすすめし合うということが最近なかったのですが、改めていいものですね。

関係ないですが8月から東京の実家へ戻ることに。ここ数年は地方暮らし・一人暮らしのマインドで作品を鑑賞することも多かったのですが、何かを読んだり観たり聴いたりする時に自分の感じ方が変わるのか、少し気になります。