げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 23/4・5

4月は6冊、5月は6冊読みました。

 

実在のラジオ番組を軸にした青春小説。語り口が筆者独特の口語体(語尾が「〜だったんだ」多用など)なことへの違和感と僕自身はラジオをほとんど聞かないのとで正直ハマらなかったのですが、葛藤や熱量に共感するところはありました。そういう意味でいい話ではありますが、泣ける話的な売り文句には疑問が残ります。

 

土地の所有者になりすまし、勝手に売却を進めて利益を獲る詐欺集団「地面師」たちが活躍する犯罪小説。珍しい題材を除けば展開は割と王道ですが、しっかり面白かったです。終わり方も悪くなかったです。

 

2021年コロナ禍を題材にした、ヤバい女性たちを主人公とした短編集。語り手の女性たちが軒並み「性+何か」に狂っているのですが、文章も構成も流石なので感情移入と批判的な目線の両方を持ちながら読めて面白かったです。誰しもが3歩くらい間違えたらこうなっててもおかしくないし、もしかしたら知り合いも裏ではこういった思考や生活をしている人もいるのかもしれない、などと考えると随分不思議な感じがします。

 

女性バディ作品と言うのがいいのか特殊設定アクションミステリと言うのがいいのか…とにかくぶっ飛んだ作品です。勢いがすごいので何も考えずジェットコースターに乗る気分かアクション映画を観るような気分で読むのがいいのではないのでしょうか。メフィスト賞出してたら取れてそう。

 

新しくできた義弟がブラジャーをつけているのを目撃し…という印象的な場面から始まる青春小説。大変読みやすく内容も面白いうえ、侮っていると人間関係のうえではっとさせられる描写もあって大変良かったです。著者は30歳でこれがデビュー作らしいですが、他の作品もぜひ読みたいと思わされました。

 

コンゲームの名作。といっても『カラスの親指』『コンフィデンスマンJP』といった作品に慣れているせいでそこまではハマらず。

とはいえ、株の購入を持ちかけられてハメられた4人の男たちが手を組んで取り返すというシンプルな筋書きなのですが、その中で色々な作戦を試みたり恋愛という不確定要素が入り込んできて読み応えがあります。終盤の展開はアツいしオチもウィットに富んでいて評価されるのも納得です。

 

弁理士である女性がVtuber絡みの特許訴訟を解決する話。弁理士についてもVtuberについても知識がなかったので色々勉強になりました。話自体はそんなに好みではないものの読みやすく、ドラマ向きだと思います。

 

怪盗だった父親への恨みを晴らすため盗品を主人公である息子が返却していくという変わった設定のミステリー。西尾維新なので面白くない訳がなく、肝心の謎解決の部分はそんなに好きではないものの全体としてはとても楽しめました。細かい言葉遊びやらせたら右に出る人いないな…と思います。ジャンプの新連載も始まっていますし大活躍ですね。

 

部屋から出たがらない映画知識に秀でたイケメンによる安楽椅子探偵モノ。実在の作品をモチーフに事件や推理が行われる点や、ラノベ的な読みやすさの割にしっかりした構成という点で『ビブリア古書堂〜』シリーズにめちゃくちゃ似たものを感じました。話もキャラクターも良かったので続編も読みます。

 

メフィスト賞も納得のエンタメ全開メタミステリ。なのに最後には実力を認めざるを得ないニクい作品なので、最初で切らずにしっかり読み切ることをおすすめします。文体はほぼラノベなので大変読みやすいです。合わない人は合わないだろうけど僕は楽しく読めました。

 

拒食症とは違い「"食べること"が気持ち悪い」という価値観に苦しむ女子高生と周囲の交流を描いた青春小説。上述の『ブラザーズ・ブラジャー』と同じ作者の作品です。

テーマや主人公の性格からして少し重かったりもどかしく感じる部分もありましたが、全体的に読みやすかったです。

 

「黒猫を飼い始めた。」という共通の書き出しで始まるショートショートのアンソロジー。知らない人も半分くらいいましたが推理作家が多いイメージ。珍しいところだとQuizKnockの河村さんがいてびっくりしました。

猫に関係ある話やミステリーチックな話や会話劇が多いですがそうでない話もあり、書き出しというゆるい縛りからこうも派生するのかという楽しみと、単純にそれぞれの話が面白いという何重にも美味しい系の作品。作中に登場する猫の名前が意外と全然被っていないのも面白いポイントでした。

元はメフィストの会員制サブスクで配信された企画らしいですね。僕は最初の無料期間しか見ていませんでしたが、気になる人は入会するのもいいと思います。

 

今月も割と数読めて良かったです。一方で映画を全然観られていないのが悲しいところ…