げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 23/1-3

1月は1冊、2月は3冊、3月は11冊読みました。

 

遠藤周作のエッセイ。重めの話ばっかり書く人のイメージがあったので、結構ざっくばらんな一面を見られて少し新鮮でした。エピソード的にも思想的にもちょこちょこ時代を感じます。

 

東京23区+αをそれぞれ語り手として喋らせる短編集。もともとはコラムだったそうで、掌編と言った方がいいかもしれません。

主に昭和〜平成中盤くらいまでを対象にその土地の歴史や印象深い人物について掘り下げつつ、名所紹介を織り込んでいくような感じで博物館の解説を聞いているような気分に。作者が東京生まれ/育ちではないということなのでその辺が反映されているのかもしれません。よく調べてまとめたなあとは思うものの、個人的には期待していたものと違ったので少し残念。

2023年現在に読んだ感想としては、既に潰れた建物の話や東京五輪の話なども出てくるので、当初作者が想定していなかったであろう面白さもあります。

 

レビー小体型認知症を患ったおじいちゃんが安楽椅子探偵となる日常の謎系ミステリー。読みやすさは◎ながら、肝心の謎があまり心惹かれなかったり納得感が薄かったりと、このミス大賞という肩書きを考えると物足りませんでした。とはいえ最後の章はなるほど〜となりましたし、ギリギリ違和感として気付けるような伏線が丹念に散りばめられており、丁寧な作品という印象。作中には色々な実在作品の名前が登場しますが、それらへのリスペクトが感じられたのも良かったです。

 

ひょんなことからチェスと出会った少年の数奇な人生譚。前半は普通にいい話ですが、明るい時間はいつまでも続かず中盤から話が一変。何ともまあこんな話を思いつくものだと思うのですが、突飛ながらも受け入れられてしまうのが小川洋子のすごいところです。ロマンや切なさや色々なものが詰まった、派手さはないけど確かに輝いている作品だと思いました。

 

「部活動連絡会」に所属する主人公たちが活躍する日常の謎系の連作短編集。話自体は面白いのですが、トリック解明後の犯人と対峙するシーンや後日譚がほとんどないのが個人的に物足りなく感じました。

キャッチーなタイトルにある通り皆人に言いたくない負い目を隠し持っているのですが、その辺りの話をもっと惹きつけるように書いてくれていたら評価は2段階くらい上がっていた気がします。あるキャラクターが言う「どんな人間にも多面性があり、その人の人間性を一元的に考えるのは良くない」という考え方に大変共感して印象的でした。

 

元手品師の叔父が探偵役となり殺人事件を解決する話。新型コロナウイルス蔓延という時代性を全面的に押し出しているのが特徴的。面白かったし何ならシリーズ化してほしいとも思う一方で、コロナの要素がなくても書ける話だったのでは?という気持ちがしないでもありません。会話劇が軽くて読みやすかったです。

 

図書委員の男子高校生2人による連作短編の青春ミステリ。どの章にも本や鍵がキーアイテムとして登場するのがタイトルの由来でしょう。

全体を通してバランスの良い余韻が残る作品で、ひとつひとつの謎や解法が美しく会話もテンポが良いのにわざとらしすぎず、大変好みでした。比較するのも野暮ですが、上記の『放課後の嘘つきたち』と比べると大筋の構成は似ているものの練度の差が見えたような気がします。続編も出ており早く読みたいのですが、文庫で購入しているのでこちらも文庫化を待ちたいと思います。

 

端から見たら異常に映るけど、これを愛と言わずして何と呼べばいいんだ…と頭を抱えたくなるような恋愛小説集。ふっ切れてる時の綿谷りさ作品に近いテイストを感じます。要するに好み。この人何でも書けるんだよな〜

 

『花束みたいな恋をした』で印象的な使われ方をしていたので読みたいと思っていた作品。静謐な文章の中に日常のささやかな輝きや少し独特な人間味が見えてきて、良い作品だと思いました。

同時に思ったのは、『花束』で登場するのは2人のすれ違いが決定的に可視化される場面で、確かにこの小説を楽しめるか楽しめないかは性格やゆとりによってはっきり分かれるだろうなと思いました。そういう意味では小物のチョイスが本当に絶妙な作品だったと思います。

 

長編かと思っていたら短編。以前ダヴィンチでオススメ本になっていたので読んでみたのですが、感動というよりは不穏さや気味の悪さを感じてしまいあまり入り込めませんでした。もはやミステリ要素がないのが辛いくらい。

 

以前SNSで話題になっていたので気になっていた本。題名の通り本のタイトルの変な覚え間違い事例が列挙されるのですが、一問一答形式なのでクイズのように楽しめます。たまに全く知らない本もありましたが、解説コメントはテンポ重視で短いため「こんな本があるんだ!読んでみよう!」とまではならず。

読んでいるうちに色んな人が色んな本を読みたがっていることや、図書館ってもっと気軽に使っていいんだ、司書の人ってこんなこともしてるんだ、など自然と見えてくる世界があるのが予想外で面白かったです。

 

女性たちが犯人のミステリ短編集。どれも人を選ぶ気はするものの、手が込んだトリックと人間の情念溢れる話で読み応えがありました。『花虐の賦』ばかり評判を耳にしていましたが他も負けず劣らずの出来。

トリックの奇抜な発想に目を奪われないのが逆に印象的で、連城三紀彦の文章があまりにも上手いからでしょう。解説の泡坂妻夫の「"探偵"と"小説"両方のレベルが高い」という評が的確です。情景や行為を嫌味なくお洒落に描写するのがとてつもなく上手いうえに、それが登場人物の心理や叙述トリックに関連することもあるので脱帽でした。

 

あまりに有名なのでずっと読みたかったものの図書館の予約が取れず諦めていた本。引っ越したことによってあっさり予約が取れました。

冒頭から犯人が明かされるサイコホラーで描写もかなりグロテスクですが、ミステリーのおすすめに必ず顔を出す理由が読了後には納得できました。筋は一本シンプルですが、それだけに圧倒的な驚きが残ります。グロ描写を除けば読みやすいので、耐性のある人にはおすすめです。

 

全寮制の学校で推理ゲームをさせられる生徒たちの不穏な日常に突如事件が起こり…というのが表向きのあらすじ。実際のところは読めば分かりますが、核心に迫るところまで読めていたのにそれを頭の中で整理しきれなかったのが悔しいです。(こちらの方が先だと思いますが)雰囲気が『約束のネバーランド』にめちゃくちゃ近いのでいらぬ邪推に振り回されました。

 

乃木坂46のメンバーであった著者が書いた、アイドルを目指す少女の小説、といういかにも面白そうな作品。全体のテンポとしては読みやすい一方で、無理に文学的な表現を狙ったようなくどい文体と、悪い意味でエゴ剥き出しの共感できない主人公と、最後のあっけなさがどうしても目につきました。伸びしろはありそうなので今後も書かれるようなら気になるところです。

 

2月に引っ越してから図書館へのアクセスが良くなり、かつ図書館の予約が格段に取りやすくなったこともあって3月はたくさん読めました。読みたいリストをたくさん消化できるのは嬉しいことです。