げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 21/5

5月は3冊読みました。

 

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)

 
新装版 虚無への供物(下) (講談社文庫)

新装版 虚無への供物(下) (講談社文庫)

 

日本三大奇書に数えられる"反"推理小説で、上下巻とも400ページ超えの厚さ。同じ奇書である『ドグラ・マグラ』は序盤から夥しい語注を伴っており、あまりのとっつきにくさに10ページそこらで挫折したものの、こちらは随分読みやすかったです。

とはいっても詳細な描写や冗長とも思える台詞回し、美しくも難解な蘊蓄と暗合、現実と非現実の入り乱れる様にいくらか混乱はしましたし、読み終えた今でも細かいところのもやもや(あれって結局回収されてたっけ?)はあるのですが、そこは割り切ってサクサク読むことにしました。余談ですが、馴染みのある土地や出身校の名前が出てきて嬉しかったです。

正直途中までは衒学趣味に偏った展開やくどい性格の登場人物を鬱陶しく感じたり、幻想的な方向に誘われている自分は正しく読めているのか?と思ったりしたのですが、下巻が始まって少ししてから途端にのめり込み、終盤の迫力には心を掴まれました。犯人の純文学的な動機は好みでしたし、その告白にもある作品のテーマはきちんと受け止めました。

推理小説でありながら反推理小説という触れ込みどおりの骨太な作品で、名作と呼ばれるのも頷けました。一方で、刊行から60年近く経った今でも密室殺人に限らず続々と新しいミステリー作品が登場していますし、僕はこれからもそれらを娯楽のために消費していくと思います。ある種皮肉にも思えますが、そうしたことを否定するというよりは読者に一定の価値観や自意識を提示するのが主な意義だと思うので、あるいはそれでいいのかもしれません。

 

パリ行ったことないの (集英社文庫)

パリ行ったことないの (集英社文庫)

 

それぞれの理由でパリを夢見たり目指したりする女性たちの短編集。日本人(当然僕も含む)が持つパリ/フランスへのイメージを上手く描きながら幅広い年代の女性を書き分けています。実際それなりの人数がいるのでたまに名前が分からなくなったりもしましたが…

読みやすくて後味も良く、随所にパリの豆知識的な勉強になるところもあって楽しく読めました。今回は文庫本で読みましたが、ハードカバー版の装丁が良いらしいので一度手に取ってみたいです。

 

今年もゴールデンウィークは味気なく終わって虚しい限りです。去年はソロモンの偽証に時間を捧げてましたが、今年はポケモンスナップに身を投じることとなりました。