げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 22/2・3

2月は2冊、3月は4冊読みました。

 

男子高校生2人による7月の一週間を2人の歌人が連なりで詠んだ歌集。コンセプトは知らずに読み始めたら分かりにくいかも。単体で好きな歌はそんなに多くなかったものの、構成や細部が読み物として面白い。物理的に挟み込まれた舞城王太郎の掌編小説も良かったです。

個人的に好きだった歌を厳選して挙げるなら以下。こういうのって好みが出ますよね。僕はおそらくベタに綺麗なものやちょうどよくウィットに富んだものが好き。「ガチで」とか「童貞」のようなワードを見るとどこか冷めてしまう自分がいます。

・体育館の窓が切り取る青空は外で見るより夏だったこと

・邦題になるとき消えたTHEのような何かがぼくの日々に足りない

・目をそらし話をそらしファミレスのこのひとときを弱火で生きる

 

エンタメ性の高い多重解決もののミステリー。ノリはラノベなんだけど内容がちゃんとしてるおかげでそんなに寒くない。

最後は若干肩透かし食らったけど、完成度高いし斬新な切り口で面白かったです。

 

前回読んだ『ノーザンブルーベリー編』の対を成すアンソロジー。簡単に言うと伊坂幸太郎選の短編セレクションで、ノーザンブルーベリー編との順番や繋がりは特にありません。

個人的に気に入ったのは中島敦『悟浄歎異』と大江健三郎『人間の羊』。名前を知らなかった作家もいる中で特にパンチを感じたのは有名すぎる2人でした。前回も書いた気がするけど、自分じゃ読まない作品に出会えるのはいいですね。

 

今村夏子を読むのは『こちらあみ子』に続いて2作目。『星の子』は原作未読だけど映画を観ました。平易な文章で書かれた日常の短編に薄く不穏なものが滲む感覚は、他の娯楽や他の作家では味わえない類のものです。強いて言えば感動するイヤミスみたいな。

この人の作品を読むと何でか分からないまま顔をしかめて泣きたいような、それでいて取り繕った笑いを浮かべたいような気分になります。上手く言えないけど、そういうパワーがこの文章から溢れてるというのはきっとすごいことなんだと思います。

 

 

日常の謎系ミステリーではあるんですが、ミステリーというよりは「いい話」というイメージ。ラノベとかとは違う意味で軽く読めて、読後感がさっぱり&ほっこりしています。

表題作の本が作中にも出てきて入れ子構造になっていて、さらにそれが各章の事件の伏線というか関連になっているというちょっと面白いつくりです。

 

僕の好みであるところのユーモアとインパクトがあってサクサク読める歌集。章ごとのまとまりがあり、一部はエッセイか小説のような感覚で読めます。個人的打率(被打)が高かったので敢えて選ぼうとすると困るけど、以下は特にお気に入り。さらに言えば真ん中が特に好き。

・ロシア産鮭とアメリカ産イクラでも丼さえあれば親子になれる

・風呂の水が凍らなくなり猫が啼き東京行きの切符を買った

・「明日暇?フラミンゴ見たい」 一行で世界の色を変えてゆくなよ

 

短歌(俳句でも川柳でもいいんですが)って短い定型詩なのに意味が分からない・意図が読めないものも多々あって、逆に字面で与えられたもの以上の衝撃や情景を与えられて、読み手の意図がしっかり受け取れた自信がある時にはニヤッとします。もちろん伝え手・受け手および作品ごとの巧拙はあると思いますが、ピンと来なかったものが他の人には刺さったりしていると不思議な気持ちになります。

当然小説でも音楽でも何にでも言えることなのですが、短歌は特に①一瞬で読める ②まとまって掲載されていることが多い ことから、誰かと互いに鑑賞会(読書会的なもの?やったことないですが)をして語り合ってみたいなと思う今日この頃です。知らない人と集まってやる・SNSのアカウントを作って発信/交流する 程の気合いはないので、これを読んでやってもいいよという知り合いの人がいたら声をかけてもらえれば嬉しいです。ただ知り合いとやる方が気恥ずかしそうではあります…

決まった人以外との交流の断絶が加速している世の中なので、そういった意味でも自分自身にいろいろなチャネルを用意できたらいいと思います。