げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 19/6

6月は6冊読みました。

 

子どもの王様 (講談社文庫)

子どもの王様 (講談社文庫)

 

小学生が主人公の、ミステリーというよりジュブナイルといった感じの話。端々にはっとさせられるところはあるものの、言ってしまえば平坦な展開。『ハサミ男』の作者だからと期待しすぎたかな…?
と思っていましたが、解説の中で「大人ならすぐ読める展開だが、子どもの頃にはよく分からないところがあったこの話を読み直して気づくことがある。これは時間差ミステリだ」というような記述があって、なるほどなあと唸りました。もはや子どもに退行することができない者としては、いくつかのトリックを肴にしながら、リアルに描かれる小学生の目線と主人公の成長を感じ取る読み方の方が楽しめるかもしれません。

 

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

 

「小人地獄」という名前の毒薬を用いた事件を扱う二部構成のミステリー。正直めちゃくちゃ面白かったです。

一部目は申し訳程度の青春っぽさを取り入れながら見立て殺人と毒薬そのものの真相に迫る本格モノ。これだけでも結構面白いけど、二部目は彼等のその後を描く形で同じ毒薬を使ったフーダニット。探偵のキャラ付けが若干好みでなかったものの、筋立てがしっかりしており期待を大きく上回ってくる作品でした。

 

強運の持ち主 (文春文庫)

強運の持ち主 (文春文庫)

 

今月唯一の非ミステリー枠。エセ占い師の主人公が周りの人や客との交流を通して何やかんやするほのぼの系の話。僕個人は占い嫌いではないものの信じてもいないので、実際の占いもこんなもんなのかなーという印象。

 

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

 
カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

 

本屋大賞はじめミステリーの賞やランキングを総ナメした作品。ミステリー界の女王アガサ・クリスティへのリスペクトと推理小説かくあるべしとでも言うべきミステリ愛がふんだんに詰め込まれており、完成度の高さにひええってなる。

ネタバレ配慮的な意味でどこまで言ってもいいか分からないからひたすらぼやかすけど、前半は僕でも分かるくらい伝統的な英国ミステリーって感じで、後半は合法メタによるミステリへの持論と愛と云々が語られてる感じ。昔と現代が融合したような細部も素敵で良かったです。

敢えてひとつ言うなら、後半側の犯人は正直読めてしまって驚きが少なかった。フェアにやろうとした結果ミスディレクションが機能しきってない感。

 

 

眠りの牢獄 (講談社文庫)

眠りの牢獄 (講談社文庫)

 

一言で言うなら、使い古しの手法でもいくつも組み合わせると新しいものが生まれるってことを教えてくれた作品。読める展開ばかりに気を取られて、えっおいそっちもかよってなることが何回かありました。若干無理のある話に読める部分もあったけど読んでて面白かったし、何より作者が書いてて楽しかっただろうなと思いました。

 

 

今月は骨のあるミステリーをたくさん読めて満足でした。エンタメ抜きの読書もしたいけど、仕事でストレスや疲れが溜まってるとそういうのを読む体力(気力?)が不十分だというのが本音です。

ぬるぬるだらだらするには時間がひたすらに足りない。人生充実してるけどこういうところはもったいないなあ。