げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

ミュウツーの逆襲Evolutionを観てきた

先週のことです。後輩に感想書くように言われたので書きます。

最初は簡単な説明、途中からがっつりネタバレ込みの感想です。

 

 

まず最初に、「そもそも『ミュウツーの逆襲』って何?」という人がいるかもしれませんね。いやいないか。

一応いた時のためにざっくり説明すると、1998年に公開された、アニメ『ポケットモンスター』シリーズ映画の記念すべき第1作目にして、20年経った今もラティ(2002年)と並んで最も高い評価を受け続ける超名作です。その評価はポケモンファンにとどまらないどころか、2019年現在でも邦画としては全米興行収入記録No.1を誇っています。

そして今回の作品、ミュウツーの逆襲 Evolution』は、フル3DCGで行う20年ぶりのリメイクになります。去年の映画終わりに流れた翌年映画予告で、僕は鳥肌が立つほど震えました。なぜなら、ややダサなキャッチコピーの通り、「原点にして最高峰」の作品だからです。

 

内容についてめちゃくちゃざっくり言うと、ポケモントレーナーのサトシがミュウツーの城に招待されて言葉とバトルを交わすという、「自己存在とは何か?」をテーマにした作品です。そこから派生して色々なテーマを包含しますが、ここでそこまで触れなくてもよいでしょう。ネットの海にはたくさんの『ミュウツーの逆襲』論が漂流しています。また、細かいところや準公式見解について気になる方は、ポケモン映画初期3作品の脚本を担当された故・首藤氏のコラム(ポケモン映画界の参考・引用率No.1文献とも言う)を参照してください。

 

 

これからガンガンにネタバレ込みで感想解説を述べていくのですが、どんでん返しとかトリック物ではないどころか20年前の作品ほぼまんまなのでネタバレとかもはやなくね?とはいえ、観たことない人はできたら先に作品を見てほしいと思います。

その際、現在上映中の作品を観るもよし、アニメ絵の原作から観るもよしなのですが、後者の場合は必ず「完全版」とついているものをチョイスして観てください。原作映画には、

①劇場公開版

②完全版(ミュウツーの誕生エピソード追加)

③正規完全版(サトシたちの描写追加)

と3パターンあることはファンの間では有名ですが、今回の作品はそのうちの①をフルリメイクしたものになっています。

完全版にのみあるミュウツーの誕生』というショートストーリーがあるかないかでストーリーの深みが大幅に変わってくるので、可能であればぜひ併せて鑑賞してみてほしいです。今回そのエピソードが含まれていなかったことについては後述します。あとアフターストーリーとしてミュウツー!我ハココニ在リ』というのもあるのでこれも良ければ。

 

 

前置き長くなりがちマンなのでそろそろ感想。

全体的な感想として、予想以上にそのまんまだけど元が良すぎるので自明にサイコーーーって感じでした。単体作品として見るなら95点、リメイクであることを意識するなら80点といったところでしょうか。

 

・3D感について

これはもう最高でした。今までの中でポケモンの良さが一番出た作品だったかもしれません。

今年5月にはハリウッド映画『名探偵ピカチュウが公開されましたが、もともとポケモンはデフォルメを前提としている関係上、極端にリアルな質感を出すよりも滑らかめな質感の方が違和感がないんですよね。その意味で『名探偵ピカチュウ 』は既存の「ポケモン」像を打ち破った作品という見方もできますが、どっちが見ててかわいいかと言うと個人的には圧倒的に今作でした。瘦せぎすのミュウツー(名探偵ピカチュウ)は見てて気持ち悪かったし、対して2頭身のミュウ(ミュウツーの逆襲Evolution)はめちゃくちゃかわいかったです。

リアルでないからといって平坦かというとそういう訳でもなく、ウインディの登場シーンやピカチュウが濡れているシーンでは毛がしっかり描かれております。こういうのを求めてたんだよ聞いてるかハリウッド。

 

ただし、人間に関しては正直うーん…という感じでした。ピクサーのような作品なら自然に受け入れられる造形でも、サトシやカスミの顔はどうしてもアニメもしくはゲームで知ってしまっているため、無意識に元と比べてしまうんですね。黒目とか口元とかが何とも言えず不気味で… ただ、他の人たちはそこまで気になりませんでしたね。違いが何かは分かりませんが、サトシカスミ以外は割とすぐ受け入れられました。不気味の谷を警戒してたけどレベル低かったので助かりました。

また、風景や建物などに関してもかなり良かったです。ミュウツー城マジでかっこいい。

 

・原作との差異、小ネタなど

・レイモンドさんが声を演じる、序盤でサトシに勝負を仕掛けてくる海賊風トレーナーの見た目がドレッドヘアになってめっちゃ変わってました。パイレーツオブカリビアンかと思った。関係ないけど名前をあげてほしい。「ポケモンショウブ、デキルカナ?」

f:id:genuinegen:20190721215431j:image 昔はシンプルなバンダナスタイルでした

・海賊風トレーナーの手持ちについて。原作公開時は、ドンファンが新ポケモンとして予告なく繰り出されて観客のテンションを跳ね上げたそうです。今回も同様に新ポケモンが来るか…と身構えていましたが、変わらずドンファンでした。ただ残念だったかというとそんなことはなく、3Dのドンファンと破壊光線がめっちゃかっこよかったので文句ないです。

  また、この冒頭部分でゴローニャカイロスモルフォンと同時に繰り出され、岩・地面タイプにもかかわらずピカチュウの電撃で瞬殺されるシーンはあまりにも有名でしたが、それを嫌ってかスリープに差し替えられていました。バイバイゴローニャ。そしてなぜスリープ…

f:id:genuinegen:20190720104248j:image 地面タイプとしての誇りを取り戻せ

 

ボイジャーさんが「波止場のカモメが…」と言うシーンで「波止場のキャモメが…」に差し替えられていましたね。この作品で、キャモメは唯一原作からこの世界に存在が新規追加されたポケモンであり、トゲピーを除いて唯一151匹枠に収まらないポケモンです。キャモメかよってところも含めてニヤッとしちゃいますね。

  エンドロールにもキャモメの姿を確認し、「何て特別な存在なんだ…」と思っていたところ、公式ポスターにも普通にいたようです。全然気付かなかった。何て特別な存在なんだ…

f:id:genuinegen:20190720104850j:image 全体が美しくてキャモメ目に入らんかった

 

・ジュンサーさんの制止を振り切ってトレーナーたちが次々と海に飛び出していくシーン。原作がどうだったかあまり覚えていませんが、キングラーにつかまって海を渡ろうとするやつと、ストライクの足を握って海を渡ろうとするやつ流石に無謀すぎん??嵐じゃなくてもキツい気がする。サトシたちを拾ってくれるロケット団の渡し舟はラプラスのデザインに変わってましたね。

 

・オリジナルvsコピーの御三家バトルシーン。フシギバナエナジーボールリーフストームと当時はなかった技を使っています。もともと何だったかは忘れましたが、迫力あって良かったと思います。リザードンはもっとがっつり力負けして嬲り倒される展開だった気がしますが、ただスピード勝負で負けたような描写になってましたね。元の方は見ててしんどかったものの、絶望感を与えるいいシーンだったと思うので少し残念。

 

・海を渡るシーンとか最後のピカチュウぺちぺちシーンとかのBGMが違った気もしますが自信ありません。特別悪い意味での違和感はなかったのでアレンジとしてはいいんじゃないでしょうか。変わってなかったら恥ずかしいので、この部分なかったことにしてください。

 

・最後のオリジナルvsコピー総決戦〜涙の石化解放シーンなんですが、こんなにそれぞれにカメラ当ててる時間長かったでしたっけ?シリアスで涙を誘う場面なのは分かりますが、かなり冗長に感じました。場面が場面だけに不謹慎っぽくて言いづらいですが…

 

・アイツーの挿話カットについて

これ、めちゃくちゃ大きな問題ですね。Twitterで世論を調べてみたところ、パッと見9割以上の人が「アイツーのエピソードが入っていないことを残念に感じる」という趣旨のことをつぶやいていました。僕自身もそう感じます。

 

初めに前提となる『ミュウツーの誕生』について、詳しいことはいくらでも情報転がってると思うのでざっくり書いておきます。

f:id:genuinegen:20190721215649j:image 幼いミュウツーかわいい

ミュウツーを作ったフジ博士には過去に幼くして他界した娘がいました。その娘(アイ)を蘇らせることが一連の研究の目的であり、ミュウツーもその流れの一つでした。アイツーと名付けられたアイのコピーは試験管の中のミュウツーと交信し、

「生き物は、体が痛い時以外は涙を流さないって。悲しみで涙を流すのは、人間だけだって」

「生きているって、ね。きっと楽しい事なんだから」

と大切なことを教えるものの、活動限界により消滅してしまいます。動揺するミュウツーは薬で鎮められ、覚醒後は研究所を破壊し、サカキと邂逅し…と映画序盤の展開につながっていきます。ちなみにフジ博士は、シオンタウンにいるフジ老人と同一人物です。

 

この話は大きく分けて「自己存在≒生きていること」「涙」の2点から物語のラストシーンへの伏線として機能しています。例えばこのエピソードがないと、ミュウツーが作られた理由が単に「最強のポケモンを作るため」だったことになってしまいますね。また、最後にポケモンたちの涙を見て新たな決意を得たミュウツーの心情をきちんと理解するのにも、上述したアイツーの台詞の存在は欠かせないでしょう。

つまり、そうした重要なエピソードを省いた「不完全」な作品をリメイク対象としたことに、僕も含め往年のファンは疑問や憤懣をあらわにした訳です。

ちなみに一緒に観に行ったポケモン仲間の友達×2は『ミュウツーの誕生』どころか本編のストーリーも忘れてて本当にびっくりしました。同世代で観たことある人でも話の内容忘れる人いるんだ…

 

ただし、映画を完成させるためにそれらが必ずしも必要だったか、あるいは実現し得たかを考えると、正直仕方なかったかなとも思います。

一番簡単な問題として、映画の尺というものがあります。2時間程度という限られた時間に対して約30分のエピソードを追加するのは、劇場公開作品には難しかったのかもしれません。昔は同時公開作品があったのでその分を使えばいけたのかもしれませんが…

また、倫理問題という点でも20年前と今とでは大きく環境が異なります。ポケモンはまだしも(?)、人間のコピー=クローンを扱う作品って現代では結構シビアな気がします。そもそも当時の劇場公開版のストーリーでも十分エンターテイメントとして高いクオリティでまとまっているので、メインターゲット層が小学生であるということを勘案しても、世界観を掘り下げるより分かりやすく冗長にせず仕上げることに重きを置いたのではないでしょうか。

他にも納期的に完成が間に合わなかったとか、そもそもそこまで考えていなかったとかも考えられなくはないですが、とにかく「アイツー全カット⁉︎ありえない!製作陣は何を考えてるの?」というスタンスの人は一度その理由を想像してもいいのかなとは思います。もちろん分かった上でつぶやいている人も多いでしょうし、感情のままに好きなことを発信すればいいのですが。

 

 

・まとめ

最後は感想とはやや異なってしまいましたが、まとめると

・ストーリーは『完全版』とは異なるものの、原作が良いこともあり、単体として完成された作品なので十分楽しめる

・3D感はポケモンは最高、人は微妙

・原作との違いを見つけながら観るのも楽しい

・時系列としては『ミュウツーの誕生』(完全版に収録) →『ミュウツーの逆襲 Evolution』(劇場公開版の原作に準ずる) →『ミュウツー!我ハココニ在リ』(別個のTVスペシャル)

 

とりあえず以上です。ネタバレ有無も含めて需要があるのか謎ですが、1人でも多くの人がミュウツーを観てくれること、それきっかけで僕と会話してくれることを願っています。よろしくお願いします。

 

あ、あと映画を観た後に「ミュウツーの城からの脱出」にも参加してきました。結果はあと一歩のところで失敗だったのですが、ポケモントレーナーの気分を味わえるところもあって楽しかったので、興味のある方は行ってみてもいいと思います。

 

おわり