げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 18/11・12

11月は1冊、12月は6冊読みました。

多分年内にはもう本読まないので更新です。

 

([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)

([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)

 

森見節全開の書簡体小説。話の展開は小さめにまとまっているものの、独特のリズムで小気味よく読ませてくる。正直他の作品の方が面白いし読みやすいと思うのですが、作者がやりたかったんだろうしこれはこれであり。

これを読んでから手紙を書いたり貰ったりする機会がありましたが、「技術」は意識せずとも使われていたなと感じます。恋文に限らず、親愛のこもった手紙は互いにそうと伝わるものですね。

 

ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)

ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)

 

本が苦手でも動物好きなら楽しく読めると思います。生き生きとした描写に冷静な(時に変な方向に熱血な)学者としての目線が織り交ぜられていて面白い。原版は60年以上前に書かれたらしいけど現代への予見も結構的確。

あとがきによれば「ローレンツが死んだとき、彼が打ち立てた動物行動学は、すでに完全に変貌していた」とありますが、その礎を築くのはどれだけ大変だったことか。コストもさることながら、周りに奇異の目で見られるのも多くの人にはキツそう。

とりあえずコクマルガラス飼いたい。

 

家族シアター (講談社文庫)

家族シアター (講談社文庫)

 

家族関係をテーマに少し心温まる系の短編集。全体通してパンチが弱い印象ですが、たまにドキッとするようなところを抉ってくるのはさすが。あと大人って昔見てたほど「大人」じゃなかったなというのはここ数年しばしば感じるところでもあります。

安定のドラえもん要素もあってちょっと嬉しい。

 

掏摸(スリ) (河出文庫)

掏摸(スリ) (河出文庫)

 

中村文則は教団Xしか読んだことなかったんですが、アングラと純文学とハードボイルドの合いの子みたいなのを書くの本当に上手いですね。確かに破滅には形がないようである(あるようでない)なあとか、力(特に権力と暴力)がある者が上に立つことは結局普遍かつ不変であるなあとかごちゃごちゃ思いました。

あとは繰り返し出てくる「塔」ですが、パノプティコン的な塔 =視線 ≒罪悪感or俯瞰する自分の暗喩という印象が最初から抜けず。あながち遠からずってところだとは思うんですが、むしろ無神世界である現代日本における「使う者-使われる者」という構図から一歩引いたところに傍観する「神」のような存在として描かれたという方が作者の意図には近いのかもしれない。知らんけど。

 

ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

 

誰でも名前くらいは知ってるやつ。恥ずかしながら少女性愛の話という以外の予備知識を持っていなかったので、読んで度肝を抜かれました。これだけ歪んだテーマでありながら世界最高の傑作に名前を挙げられるのも納得しました。読みやすいのに重厚で先月から読み始めてやっと終わりました。

主人公のH・Hは現代で言う「ロリコン」のひと言に収まる器ではありませんでした。今風に言うなら、ロリコンヤンデレ・DV・サイコパス・メンヘラ+性欲の権化って感じでしょうか。ひたすらに狂気だけど、それを自覚している場面と自覚していない場面があるのが逆にリアル。

そして上記コンテンツ力が吹っ飛ぶほどの文章力。具体的に説明するものでもないですが、少なくともここ一年間で読んだ本の中では群を抜いてます。教養がないと注釈読んでもピンとこないところも多いですが、ナボコフ一流の表現やジョークが溢れかえっていて重いのに軽く読める。再読時はロリータの呼び方が何種類あったか数えながら読もうと思います。

加えて小説としてのクオリティの高さ(厚さ)。ポルノ(だとは個人的に思いませんが)にも見え、歪みながらも純粋な恋愛小説にも見え、サスペンスにもミステリーにもポストモダンにも見える。とにかくパワーがある本でした。いやーいい本を読みました。

 

フーガはユーガ

フーガはユーガ

 

一瞬「悪童日記」がよぎるような双子の物語。やや緩めなちょうどいい伊坂節。ホワイトラビットとか若干堅めだったのでこのくらいが好き。一方で描かれる悪が生々しすぎるのはやや苦手。

『フーガ「と」ユーガ』ではないところに良さを感じますね。いつもながら過去作のリンクがあるのもよかったなー。あとはコピーが若干ネタバレ風味で嫌いでしたが装丁かっこよかったのは◯。伊坂幸太郎が変わらず一番好きです。

 

名探偵の掟 (講談社文庫)

名探偵の掟 (講談社文庫)

 

メッタメタのメタ小説で、批判意識を持ったバカミスって感じ。ぶっちゃけ単体で見れば好きではないけど、読者として少し反省させられるところも。

というか20年前から推理小説の基本構造は(少なくとも素人目には)大きく変わってないんだなと思わされたのが一番印象的だったところでしょうか。今なら叙述トリックとかへの言及ももう少しありそうですが。あと解説の随所には納得させられました。

 

気まぐれに始めた何ともまとまりのないブログですが、これで10記事目のようです。

2018年ももう年の瀬ですが、本に限らず来年も色々なことを経験して色々なことを吸収していきたいと思います。

おわり