げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 2019/4

4月は6冊読みました。

 

人を動かす 新装版

人を動かす 新装版

 

大学4年生の誕生日に父親から「これは読んでおきなさい」と贈られた本。普段自己啓発本の類はほとんど読まないのですが、定番中の定番というかバイブル的な扱いの本だけあって、読みやすさ・内容ともに非常に良かったです。ざっくり言うと人と上手くやっていくコツが、大量の先人たちの例を通じて箇条書き風に語られています。

本書を通じて最も頻繁に登場したフレーズは、「相手に重要感を持たせる」(例:役割を与えてあげる、信頼感を伝えるなど)ことがいかに大切か、そして有用かということです。孔子の教えと同じく、自分が言われて嬉しい言葉をかけ、されて嫌なことはしないということは思った以上に有用で、なのに意外と難しいものです。

ただ僕も実践には程遠いながら、これを読んでから我慢・許容できることが増えて少し人に優しくなれたように感じます。駆け出しの社会人という立場ではこれをスキルとして身につけることは大変大事だと思うので、心のバイブルの一冊としてたまに読み返すようにしていきたいです。

 

史上最強の哲学入門 (河出文庫)

史上最強の哲学入門 (河出文庫)

 

大学で人文学を学んだ者として最低限哲学史の基本くらいは知っておきたいなと思い、入門書を調べていたところヒット。作者はなぜか「既存の哲学入門書が分かりにくいのは『刃牙』成分が足りないせいだ」と感じて本書を書き上げたらしく、そこかしこに「プラトンの入場だー!!うおおおおおお!!」とか「ヘーゲル 必殺技:弁証法」みたいなことが書いてあるのですが、これが驚くほど分かりやすいです。マジで何でだ。

ちなみに刃牙というのは『グラップラー刃牙』という格闘漫画です。僕はこの本を読むために漫画喫茶で刃牙をちょっとだけ予習しましたが、その必要はまるでなかったです。

f:id:genuinegen:20190507221727j:imageこれが一番有名かも

正直分かりやすさに『刃牙』成分が大きく寄与しているかと言われると一周回って驚くほどそんなことはないと思うのですが、構成と説明の妙でしょうか。基本中の基本についてしか触れられていないのでしょうが、哲学というものの変遷を辿るにはこれ以上読みやすい本はないと思います。東洋哲学バージョンもあるようなのでそちらもいずれ読みます。

 

タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)
 

食やレストランを題材にしたミステリーは数あれど、料理の描写が抜群に美味しそうなのがこちら。事件の部分も面白いのですが、それ以上にお腹が減ってきます。短編の人間ドラマ的な部分を軸にした温かく読みやすい筋も好みですし、表題にもなっている各章タイトルのセンスの良さも好きです。

 

こうして誰もいなくなった

こうして誰もいなくなった

 

著者が著者なのでチャレンジ作というほどではないですが、巨匠の意欲作といった中短編集。アリバイ、密室、ファンタジーなど色々なテーマで綴じられていて飽きません。表題作のラスト編はそこまで好みではなかったものの割とスマート。むしろ日常系短編とかの方が好きでしたが、いずれにせよ幅の広さを見せつけられた感じがしました。

 

シーソーモンスター (単行本)

シーソーモンスター (単行本)

 

伊坂幸太郎が有志(と言うには豪華すぎる作家陣)と共に始めた「螺旋プロジェクト」の一冊。螺旋プロジェクトについてはこちらをご覧ください。(「螺旋」プロジェクト|つながる文芸Webサイト「BOC」ボック

中編2作から成っているのですが、昭和の嫁姑バトルを描く「シーソーモンスター」は抜群の伊坂節でぐるんぐるん展開していって楽しい。近未来の監視社会を描いた「スピンモンスター」はゴールデンスランバーとモダンタイムスを掛け合わせたような感じで、これまた目が離せません。「フーガはユーガ」もかなり良かったけど、2作品間および他作家の作品ともリンクを持つ本書は間違いなく最近の伊坂作品の最高峰。エンタメ最高。

 

 

死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの

 

上記「螺旋プロジェクト」の第一弾。舞台となる時代は平成。相変わらず等身大の若者を描いてえぐってくるのが上手いですね。途中胸が苦しくて仕方なかった。そういう意味では「何者」とテーマは近いかも。生きがいを求める若者を描いた作品って聞いたらもっと前向きな意味で熱い内容を想像しそうなものだけど、一筋縄ではいかないなというか、いっそひねくれてるというか。でもそこがやけにリアル。

僕自身結構ふらふらしてたり自分大好きでも他人に流されたり、努力してないのを周りのせいにしてたり、そういう人間なので刺さるところが多かったです。もちろん話としてもかなり面白かったうえ、「シーソーモンスター」との節々のリンクがニヤッとさせられたりハッとさせられたりという感じで、非常に楽しめました。

螺旋プロジェクトの他の作家さんたちは普段読むことが少ないのですが、縦の通史として読むのも楽しそうだし、細々したところを忘れないうちに全部読みたいですね。まだ全貌は掴めてないものの魅力的な企画だと思います。

 

 

GWを楽しみすぎて書くのがだいぶ遅れました。気付けば僕の愛する平成も終わりました。

最近色々考えることが多いのですが、言葉にまとめづらいのと筆が乗らないのとでなかなか投稿できずにいます。人生そんなもんかなとも思いますが、せっかくなので何かしら形に残していけたらいいなあ。

おわり