げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 22/6・7

6月は4冊、7月は4冊読みました。

 

とんでもなく良かった『推し、燃ゆ』の作者のデビュー作。後輩の友達らしいです。月並みだけど、若いのにすごい。

タイトルにもなっている通り、家族というか母の話。書簡の形式を取った独白調&方言で綴られており、近さやリアルさ、切実さがより伝わってきます。薄いのに結構パワフルな作品で、好みではないけど改めてすごいなと思わされました。

 

コロナが広まり始めた時期の人々を描いた短編集。川上未映子なので当然文章は達者で、話はどれも地獄を1,000倍に希釈した沼の浅瀬に入ったか入ってないかみたいなテイスト。日常にふと気付くとじんわり毒が滲み始めたようなイメージの方が近いかもしれません。

読んでると心の刺激されたくない部分が刺激されるのですが、大変良い作品でした。個人的にはベタに『ブルー・インク』『娘のはなし』がとても好き。

ちなみに、装丁に一目惚れしてジャケ買いしました。写真だと伝わりづらいけど、表紙の灰色とピンクはどちらも溶け合うように淡く、そこにタイトルと著者名が銀の箔押しなんですよね。美しいし、読後の感想としては内容にもハマっていたので流石です。

 

 

昔から名前はよく聞くミステリー。肝のトリックには気づけなかったものの、個人的にはスッキリせず好みではありませんでした。ただし『天啓の殺意』でも思ったように、書かれたのが結構前(今から50年くらい前)なので、当時としては斬新だったのかもしれないし、今読んでそういった感想を持つのもやむなしかと思います。

 

お金持ちの主人公が妻を殺そうとするところから始まるミステリー。視点&時系列が定期的に切り替わるのですが、特に混乱もせずむしろ飽きずに読み進められます。

全体を通してずっと面白いですが後半の刑事には拍子抜け。ラストの終わり方はいい余韻だと思います。

 

昨年読んで面白かった『六人の嘘つきな大学生』の作者の新刊。前半でSNS社会の怖さをこれでもかと突きつけられるし各世代の人々をグサグサ刺す強いメッセージ性が目立つので社会派系かと思いきやちゃんとミステリーしてて面白いです。

引っかかりポイントを頭に残しつつ一気読みしたおかげで全部分かったうえでさらっと再読できてその巧妙さに唸らされました。個人的には前作の方が好きだけどこれはこれでパワーのある作品。

 

特殊設定を活かした中短編ミステリ×4本。名作‼︎という感じではないですが、現代的で読みやすいし話もしっかり面白くて良かったです。ただ特殊設定に付随するディテールの部分(トリックや小道具的な部分)でいくつか分かりにくいところがあったので、この辺りは映像化した方が向いている気がします。といっても表題作とか透明人間だからな… できるかな…

着想を得た作品なのか、他作品の一節が各編の冒頭に引用されるのがオシャレで好きです。

 

ネタバレをしない方がいいタイプの話なので詳しくあらすじや感想を書けませんが、過去読んだ今村作品と同じく独特な視点で没入感と不穏さを与えてきます。ズレみたいなものがじわりじわりと姿を現してくる感覚は健在です。読みやすさに反して色々と解釈に悩む作品ですが、そこも含めて面白い作品だと思います。

個人的には人間の相対性(人間社会の中での個人)や先入観といったものが浮き彫りにされる作品だと思いますが、ネットの考察で「アナグラム」「補色」といった意見を見てなるほどなとも思いました。

また、寡作故に著者の人間性をあまり知らなかったのですが、文庫版で読んだら受賞時コメントやエッセイが収録されており、だいぶ特徴的な性格の方であることが分かりました。何だか納得です。作品を読んでそちらを読んでいない方は(もともと知っている熱心なファンでなければ)見方が深まったり新鮮に感じられると思うのでおすすめです。

 

綿谷りさ新境地、のアオリに惹かれて購入したら期待を軽く飛び越えてこられて大変満足だった作品。コロナ禍という背景をほんのり絡めつつ、現代のヤバい奴らを描いた短編4本。

ライトさを意識した語り口調で展開されるので元の文章の上手さが損なわれるかと思いきや、随所に流石だなと思わされる表現があって何か納得。もともとギリギリ現実にいそうなイタい人とそれを俯瞰する視点を描くのは上手いので合っているんでしょうね。しっかりめのやつと交互に読みたいテイストの作品でした。

 

 

感染者増にもかかわらず友人と遊ぶことも増えてきましたが、たまに来る読書モードの波を逃さず月数冊ペースを確保しています。

カラーボックスを買ったものの組み立てないまま1ヶ月が過ぎました。積み本は増える一方です。