げんろんのじゆう

人生は与えられたカードでの真剣勝負

読書録 20/6

6月は5冊読みました。

 

LINEノベルにて全文無料公開されてたので読みました。タイトルの過激さと長さから、よくある低レベルなラノベチック文章を想像していましたが、蓋を開けたら何とも良質な青春小説でした。このタイプで当たり引いたの久々。

最初の最初はそれこそお涙ちょうだいラノベでつまらなそうな気がしないでもなかったんですが、繊細で巧みな言い回しと、かなり各所で見覚えはあるもののしっかりキャラの立っている登場人物たち、そして舐めてかかるといい意味でちょっとだけ痛い目見る気持ちのいいストーリー立て。シンプルに面白かったです。

一応例えるなら、伊坂幸太郎節と『氷菓』を混ぜてアレンジしたような感じでしょうか。『砕け散るところを見せてあげる』とかにも少し似てる気はしました。詰まるところ既視感を感じる点が少なくないのですが、それが気にならない展開と文章の面白さが魅力、ということになるかと思います。いつまで無料かは知りませんが、本が苦手な人でもスマホで横文字(文字通りの意味)で読めるので読みやすく、内容も分かりやすいのでおすすめかなと思います。

 

詭弁の話術 即応する頭の回転 (角川文庫)
 

小学生の頃に父親から借りて以降、数年ごとに読み返してる本。もともと頭と口がそこそこ回る子どもだったのが、これによって加速させられた気がします。

内容としては、生活の中に浸透している詭弁についてユーモア満載で説明?批評?されてる本になります。実用というよりは、笑いながらなるほど!と言える読み物という感じ。書かれたのが1993年ということで少し当時の時事ネタなどもありますが、そこまで気になりません。読みやすくて面白いし、読むたびにニヤニヤさせられます。

 

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

 

有名作家ながら初読。ファンタジックな儚さを持ったSF短編集。中国生まれで11歳からアメリカで生活しているという著者の経歴に違わぬ通り、アジアの香りを感じさせる作品が多くて新鮮。余談だけど、解説読んでたらハーバード出てマイクロソフトプログラマーやって弁護士やってたらしく、それでいて今は作家としてこの地位にあるということで、ガチのエリートすぎてびっくりしました。

作品についてはどれも味わい深く読んだものの、一部自分が中国/台湾/日本の近代〜現代史に勉強不足なことがややネックになる作品もあった。多少知識がなくても読めるけど、背景をきちんと押さえている人ほど作品を掴めてない気がします。

収録作品7編の中で特に好きだったのは、『結縄』『愛のアルゴリズム』『文字占い師』。それぞれ歴史上の悲哀やSF的な異世界線を下敷きにしながら、科学と文化人類学や哲学を上手く融合させて読ませる作品になっています。『文字占い師』は他2編とは少しポイントが違うけど、構成の綺麗さに唸らされました。

もともと中国作家の作品にほぼ触れてこなかったのと、(毎度言ってますが)SFが不得手でド名作しか読んだことがなかったのとで、あまり読んだことのないタイプでした。次のやつも買ってあるのでそのうち読みます。

 

ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

 

女性同士の「友情」を題材に、実はもっと普遍的な人間関係とかコミュニケーションとか生き方とか、そういうものを根底に敷いた話。

登場人物の考え方がリアルにありそうなサイコ感で普通に読んでて怖かったのと、中盤からはもう何か色々と地獄でした。良かったのは作品の出来だけで、巻き起こるできごとも僕の感情も鬱々としたり悪い意味で爆発したりしてました。

そんな風に感じさせるあたり当然ながら文章が上手くて、後半はメッセージ性のラッシュだったりもして、作者の技量を見せつけられてしまいました。

 

明け方の若者たち

明け方の若者たち

 

Twitterサブカルオシャレ代表みたいな感じの著者のデビュー作。失礼ながらあまり期待せずに試し読みしたら良かったのと、何より装丁が綺麗で、そういう本はやっぱり買わないと。と思ってたのに、買ってしばらく机に置いておいたところ何故か知らんけど表紙がふやけて裏の紙とくっついたりしてて、めちゃくちゃ悲しい思いをするなどした。それはそれで味が増したように見えないこともなかったので一応そう言い聞かせてみたものの、カバーをめくったらしっかり中もデザインされてるタイプの本で少し安心してしまったので、つまりは悲しみのままでした。

内容としては、良い意味でエモさに9割振ったような、20代前半〜アラサーを共感に巻き込む話でした。かく言う人並みに経験の少ない僕でさえどのエピソードにも自分を重ねて見られて、初めての彼女とのこととかその後のこととか今でも付き合いのある大学の友人たちとのこととか、色々思い出しました。

あと、構成としては流れとしての物語よりもその時々のシーンを切り取ってたり、文章としての練度よりもその場面での感情の質感をダイレクトに描こうとしてたり、そういうのって目新しいことではないけど「今っぽい」というか、何か若者受けしそうだなと思いました。具体的には上手く言えんけど。そもそも僕のが著者より年下だけど。

エモい思い出って誰でもある程度持ってるとは思うんだけど、多くの人のそれを喚起させる文章を書けるっていうのはすごいなあ。こういう作品は主観と思い出を各人がオリジナルのスパイスにして読むものだと思うので、また数年後に読んだら思うことも少し変わってるのかなと思うと楽しみです。

 

最近はちょっと外に遊びに出たり遠出したりできるようになってきて、日常が戻りつつあります。本屋に長居しづらいのは残念ですが…

コロナのせいか仕事に慣れたせいか分かりませんが、この半年は秒でした。嬉しいようなもったいないような。

何かぶっ飛ぶような出来事が欲しい今日この頃。